「英語に没頭」しませんか

英語学習

英語学習者であれば、日本人の話す英語のおかしいところを指摘した本とか動画とか、気になってみたことがあるのでは、と思います。

「日本人の英語」という本があります。結構古い本です。(1988年初版)この本はタイトルの通り、日本人の作る英語のおかしさについて書いてある本なのですが、僕の読んだ他の本や見た動画と違って、分析がとても深いです。(著者はマーク・ピーターセン氏、1980年フルブライト留学生として来日、とありました)日本語と英語の背景文化までわかっていないと書けない書き方なんです。とても面白く、興味深く読んでしまいます。たとえば、、

鶏を一羽食べてしまった:
 Last night, I ate a chiken in the backyard. (中略) おそらくその文章で友だちがいおうとしたのは、アメリカの普通の backyard chicken barbecueで鶏肉を食べたこと(つまり、I ate a chickenではなく、I ate chicken)にすぎないと、私は判読したが、不思議なことに、Last night, I ate a chicken in the backyard.という文章は、正しい英文としても、間違いの英文としても、傑作と言ってよいものである。正しい英文として読めば、簡潔で、とてもヴィヴィッドで説得力のある表現になるのである。夜が更けて暗くなってきた裏庭で、友だちが血と羽だらけの口元に微笑を浮かべながら、ふくらんだ腹を満足そうに撫でている- このような生き生きとした情景が浮かんでくるのである。

明治な大学:
「私の勤める大学の学園祭で、学生テニス同好会のクラブ・ジャンパーの背に次の言葉が大きく、派手な文字で書いてあるのを見かけた。 University of Meiji Tennis Club ..(中略)ふつうの日本人には"University of Meiji" がどんなにおかしいか理解しにくいと思うので、日本語にたとえてみたい。..(中略) 気持ちの上で言えばむしろ「明治な大学」などというような、わかのわからない、やや気味の悪いような言い方をしないと、"University of Meiji"のおかしなニュアンスが通じないであろう」

この本は、続編として、「続日本人の英語」、さらに「心にとどく英語」も出版されています。

実は、僕は、「続日本人の英語」がいちばん好きです。日本、米国の映画を題材にして表現の違い、言い回しの違いから、文化の違いの解説をしてくれているんですよね。

伊丹十三の傑作映画「タンポポ」には、次の場面がある (中略)初めてのデートに出かけた場面で、二人はすごくおいしそうな骨付きのカルビを焼きながら、次の会話をする。
タンポポ「ねぇ、あたしよくやってる?」
ゴロー「よくやってるよ」
タンポポ「えらい?」
ゴロー「えらい、えらい」
(中略)
「えらい?」というくらいの簡単な表現が、なぜ素直に英語で言えないのだろう。その日本語の前提となる日本人同士の価値観を考えてみたら、なぜかが分かると思う。(中略)日本で暮らしたことがなければ、映画の「タンポポ」で、彼女がどういうつもりで自分のことを「えらい?」と訊いたのか、理解するのは難しいだろう。

僕はこの文章を見て、「日本語ってなんて奥が深くて美しい言葉なんだろう」と再認識させられたんです。

他にも「オズの魔法使い」、「東京物語」(このラストのセリフの解説も、日本語の美しさをとてもしみじみと思い起こさせてくれます)、「カサブランカ」(この解説では、本当に「カサブランカ」の英語のセリフを自分が全く表面的にしか理解できていなかったことを教えてくれました)など、深い解説が色々書いてあります。

有名な本のようですが新書なので、手軽に見てもらえると思います。図書館なんかにも置いてあるんじゃないかな。日本語と英語の考え方、文化の違いに興味のある方にお勧めです。

この「続 日本人の英語」に、元気づけられることが書いてありました。

日本にいながら英語の感覚になじむことは、年齢を問わずに十分にできると思う。必要なのは没頭することだけである。私の経験でいえば、本人にとって心から夢中になれる内容さえあれば、どのような英語を対象にしても構わない。(中略)本当に自分の体の一部とするためには、単に、日本語にどう訳すかという以前に、その表現の内側に入り込むことが必要だろう。それは、なぜこの表現になっているかの鍵は、文法書や辞書の中にあるわけではなく、その英語自身のなかにあるからである。

僕も、この著者が日本語に没頭したように、英語に没頭してみたいと思います。

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