遅くない、個人年金「解約」

マネー・FP

皆さんは、個人年金に入っていますでしょうか。

僕は、昔、あまりよく考えずに「強制的に積み立てておける仕組みだし、きっとみんなもやっているからお得なんだろうな」と入っていました。メリット、デメリットもしっかり吟味していなかったです。

その時(まだ時間という財産を持っていた時)、今の知識があったら、NISAでS&P500や全世界株式のノーロードインデックスの積立てに回していたとは思います。が、過去を悔やんでも仕方ありません。現在時点で、そのまま続けるべきか、解約すべきか、考えてみたいと思いました。

ちょっとWebで調べると、「入るべきかどうか」という説明は多いのですが、すでに入っている人がどうすべきか、というのはあまり見つかりませんでした。見つけたところはどこも「途中で解約したら損ですよー」と書いてありますね。

まぁ自分で納得したいので、調べてみることにしました。

この記事の対象者
・過去に個人年金に入っていて、続けるかどうか迷っている人
・個人年金に入るかどうか考えている人

個人年金の概要

個人年金は、Wikipediaを見ても直接の定義が見つかりませんでしたが、「民間年金保険:民間金融機関が運営する。一般に保険料の運用リスクが公的年金よりも高い。「個人年金保険」ともいう。(Wikipedia「年金保険」のページから引用)。」とありました。まぁ要するに、民間会社が運用する、年金として使う保険商品の一種、ということですね。

検討のポイント

ここでポイントを整理したいと思います。

利率

まず個人年金(ほかにも、学資保険など貯蓄型の保険でも)では、支払った総額に対して、どのくらい受け取れるかの割合である「返戻率」という考えがあり、それで比較することが一般的のようです。でもこれって年利にするとするとどう考えればいいのかな。。時間の概念がないと、他の金融商品と比較できないのでは。いきなり躓いてしまいました。長期間になればなるほど「返戻率」は上がらないとおかしいですよね。

しょうがないので、払込期間を典型的なケースで固定して考えてみようと思いました。返戻率のランキングが高いという商品を検索してみると、払込期間20年、受給期間10年で、返戻率107%弱の商品が1位になっていました。ということは、例えば月2万円として、20年かけて、2万円×12か月×20年=480万円払って、年金が合計で513.6万円もらえると一番お得な商品、ということになりますね。

毎月2万円を積み立て、20年で積み立てた元金480万円を513.6万円にするための複利での年利は0.34%になります。(本当は受取に10年かかっているので、もっと低くなるはずですが計算が面倒なので省略。少なくとも0.34%よりは低くなりますね)

リスクの高い株式と単純比較するのはいいかどうかわかりませんが、1991年以降の米国S&Pの平均リターンが年9.3%。20年積立投資していたとすると1333万円。利益(1333-480=853万円)の20%、つまり約171万円を税金としても、「返戻率」は242%。うーん、平均で計算すると勝負にならないですね。

ただし、もちろんこれは投資信託やETFになるので、元本割れのリスクもあるわけです。このリスクを許容できるかというのが大きなポイントですね。投資期間が長く残っていればいるほどこの許容度は大きくなりますが、残り少ない場合は、元本割れのリスクがかなり小さく、少なくとも定期預金よりは利率がマシな個人年金のままで行くという選択肢もありますね。

控除による節税効果

これは個人年金のメリットとして必ず謳われていますね。

個⼈年⾦保険料控除としては、国税庁のWebページで調べると、旧制度(平成23年以前に設定された保険)だと所得税の控除額最高5万円、新制度だと控除額最高4万円。

これと別に、住民税に関しても控除が適用され、最大で旧制度3.5万円、新制度2.8万円の控除のようです(これは国税庁のWebページから見つけられず。もう少し探してみます)。

上記は控除額なので、「結局税金はいくら安くなるの?」という問いに対しては、住民税はほぼ一律で10%、所得税は収入(厳密には各種控除を引いた課税所得)によって異なりますが、まあ課税所得900万円以下の人を前提とさせていただき、23%以下。とすると、年間最大で旧制度1.5万円、新制度1.2万円、税金が安くなるわけです。先ほどの20年間トータルで考えると、多いほうの旧制度で最大30万円税金が安くなります。

最大減少額(年)所得税住民税合計
旧制度1.15万円0.35万円1.5万円
新制度0.92万円0.28万円1.2万円

先ほどの「返戻率」の計算でこれを考慮に入れると、(513.6+30)÷480=約113%。先ほどよりは悪くない数字に見えますが、、242%と比較するとまだまだですね。

解約時の「返戻率」

「解約しないほうがいい」という説明に必ず書かれている内容として、「途中でやめると、支払った額より低い金額で受け取ることになる事が多い。」ということがあります。これは、契約によると思うので、実際の契約を確認する必要がありますが、10年以内に解約する場合は支払った額以下になってしまうことが多いようですね。

ただ、これって、「支払った額より低いから、損=やめるべきでない」と簡単に結論付けるべきではないと思います。例えば、20年積立予定で、すでに10年積み立てていて、240万円払っていたけれど230万円しか返ってこないから10万円損した、だからやめるべきではない、というのではなく、残りの10年で、続けていた場合よりももっと良い選択肢が考えられるのであればそれも考慮に入れるべきでしょう。

一方で、支払った額よりも多くの解約返戻金が受け取れる場合も注意が必要です。この場合は、利益額に応じて所得税が課税される場合があります。(一時所得には50万円の控除額があるので、必ず課税されるとは限りません。他の一時所得があるかどうかで大きく事情が変わってくると思いますが、控除額を超えるほど利益が出る利率で契約できている人がいるのかな、という気はします。いずれにせよ確定申告は必要になりますね。)

その他のリスク

運営会社が倒産するリスク、インフレになってしまうリスクなどがありますね。これは、定量的にパラメータとすることが難しいですが、判断の重要な材料になると思います。また、個人年金は基本的に固定金利で運用されていると思うのですが、これが確約されていない場合もあると思います。これも実際にはでかいリスクですね。

結論

自分なりの結論をまとめます。

  • 返戻率を年利、あるいは年利を期間固定の返戻率に直すことで、他の金融商品と比較基準を統一にする
  • さらに節税効果も定量化したうえで、他の金融商品などの選択肢と比較する
  • 損するからと言って、やめないと単純に結論付けず、リスクとリターンを定量的に比較する
  • 特に他の金融商品に替える場合は、自分としての元本割れのリスク許容度を十分に考慮する

今回は特に、節税効果を定量的に計算してみて、「こんなものか」ということが分かったことが収穫でした。

なお、保険の種類によっては、全解約ではなく、今までの支払い分を残したまま、これからの支払いをサスペンドできるものもあるようです。自分の場合も上記に照らし合わせ、どうするか決めたいと思います。

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