FP1級に通勤電車の独学で合格する~実技試験の勉強法

マネー・FP

2022年にファイナンシャルプランニング技能士という資格に興味を持ってから2年ちょっと、ほぼ通勤時間と昼休みのみで勉強し、CFP資格試験合格を経由してFP1級(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)実技試験(面接)を受け、何とか合格することができました。

今回は このFP1級の実技試験の対策について記録を残しておきたいと思います。

最初に~CFPを持っている人はFP1級を受験する必要があるか

CFP と FP1級 どちらが難しいとか、どちらがいいか、という話をよく Web で見ます。FP1級に先に合格した方はCFPをその後別途取得することはあまりないようなので(Web等でそのルートをとっている方を見たことがないのでそう思いました)、ここでは「CFP資格試験に合格した方はわざわざ FP1級を取る必要があるか」という論点で話したいと思います。(CFP資格試験に合格すると、難関だといわれているFP1級の学科試験が免除され、実技試験を受けるだけになります)

(日本FP協会に違いの説明がありますが、どちらが難しいとかどちらのほうがいいとかは、当然ながら書かれていません。https://www.jafp.or.jp/aim/fpshikaku/kind/)

私の答えとしては 「迷っている、すなわちこの文章を読んでいるのであればすぐに受験した方がいい」です。
資格試験の受験のスキルは試験を受けた瞬間が(少なくとも試験問題を解くといスキルについては)非常に高いので、それが生かせる試験は、早く受けてしまった方がいいです。対外的にどちらが難しい なんていうのはあまり大きな論点ではないと思います。ただ相談する方にとっては CFP というのは聞きなれないキーワードで、なんか知らないけど1級というのは一番難しい級だろうからそれなりに難しい試験なんだろうな、と思われることが多いだろうから。早いうちに取っておいた方がいいと思います。

FP1級実技試験について

FP1級の2次試験については様々なところに情報が既にありますが、簡単におさらいすると、2つの方法があります。

一つは、きんざいが主催している実技試験(面接)を受ける方法。これは年3回実施されています。

https://www.kinzai.or.jp/ginou/fp/1kyu/j_youryou.html

もう一つは、日本FP協会が主催する実技試験(筆記)を受ける方法。これは年1回9月に実施されています。

1級FP技能検定 試験要綱 | 日本FP協会

私は、受験資格を得てから一番近い試験がきんざいの面接試験だったので、そちらに申し込みをしました。受験回数からしても、その方がチャンスが多いのでお勧めだと思います。

自分が不合格の二割側にいることを心底理解する

まず受験にあたっての心構えというか、自分としての考え方としてはこうでした。 きんざいのFP1級実技試験は 面接試験で8割以上の方が合格します。ただし 母集団のレベルが全然違います。FP1級のあの難しい筆記試験問題を 合格点まで 解ききった方、あるいは CFP 試験を6科目全部合格した方というレベルの方しかいない中で、2割も落ちるということです。ここまでたどり着いた人なので、実技試験もノー勉あるいはちょっとだけしか勉強していない、なんて人は皆無です。難しい1次試験をクリアし、それなりの情報を得て対策をした人の中から2割落ちる、ということです。また当然 ファイナンシャルプランニングを専業でやっているプロの方が多数いるわけです。その中で2割落ちるということがどれだけ厳しい試験か、というのをまず しっかりと腹落ちしたうえで、自分が2割側にいる人間であるかどうか理解しておくことが重要だと思います。私は確実に2割の方にいました。(そうでない方はフフンと思っておいてください。これ以降読む必要はないです。)

勉強の基本は過去問。2年分やる

勉強の基本はやはり 過去問 だと思います。まず出てくるのがこれ、TAC出版の出している 過去問。これは基本受験者全員やっていると思っておいた方がいいと思います。

きんざいが最新版を出さなくなったのでTAC出版が引き継いだ、というのをどこかで読んだ気がします

実際に私の面接を受ける部屋の方は全員これを持っているように見えました。(本にカバーをしてる方もいたので確実ではないですが)

しかし、これだけでは私としては対策としてちょっと足りませんでした。この問題集では過去問が20問しか掲載されていないので、頻出論点をカバーするには量が物足りないのです。

色々な方の受験体験記を読ませていただいてそれに気づいたので、私はこれに加えてAmazon でこの本を見つけて3冊、TACの本でカバーされていない直近分を購入しました。

結局 対応した 過去問はTAC本と、この過去問集3冊を合わせ、全部で 42問。これだけやっておけば法改正の対応以外はおおむねカバーできるのでは、と思いますが、余裕があればあと1年分やっておくと安心だと思います。

例えば 今回 パート1で 新NISA の説明が出ましたが上記過去問で出ていたので ここは完璧に答えることができました。NISA は TAC 本には載っていない 要件でしたのでもしかするとこれを取れなかった方もいるかもしれません。

とにかくCFP資格試験と同じで、過去問をまずやってみるのが一番効率がいいと思いました。もちろん1周目は、このような業務に携わっていない方は、皆さんうまく答えられないと思います。解答を見るとあーなるほど知識をこういう風に使うんだなというのがわかるんですが 問題文を見た時にこれを使えばいいという勘所が1周目では全然つかめませんでした。2周目、3周目くらいでやっと回答の道筋がわかってきた感じでした。

定番切り口は語呂合わせで

この試験は、パート1(社長の事業承継系が多く出る),パート2(不動産活用関連が多く出る)の二回面接を受ける形式ですが、両者いずれも必ず出る問題のパターンがあります。前者では ファイナンシャルプランナーの職業倫理、ですね 。後者については、「この説例でアドバイスするために足りない情報をクライアントに何を聞くかと自分で何を調べるか」、さらに最後に問題に出てくる「この案件で関係する専門家にはどのような人がいるか」というものです。

まずパート1については、素晴らしい語呂合わせを見つけたので、これを参考にさせていただき覚えました。あと、過去問をやっていてわかってきた解答の定番パターンをとして、私はこの3パターンを必ず言うことを心がけました。まず1番目 相続税の軽減。2番目 円滑な遺産分割。3番目 納税資金の確保。そして1番目については 株価の低減と小規模宅地の特例 2番目については 遺言書の作成。3番目については一時払いの終身保険。これは言い忘れると減点必至の重要論点 なので、うっかり言い忘れがないように問題が配られた時、問題を読む前に書き込みました。(なお、パート1ではこの書き込みをやったのですがパート2で書き忘れて、「遺言書」を言えばいいところを言い忘れました。。)


パート2の定番「この説例でアドバイスするために足りない情報をについて、クライアントに何を聞くか、自分で何を調べるか」も、上記の過去問をやっていくたびに聞かれることをメモに追加して、最終的に以下のリストを作りました。

聞くこと

  • 希(希望。建物間取りなどの希望、借入したいか希望、まとまった金が欲しいか、希望の利回り、介護、家族関係、養子、生活費、ライフプラン)
  • 相(相続。相続に関する考え方や相続で入手した実家の取得日)
  • 収 (収入。クライアントの年収や財産の額)
  • 契(契約。取得費や取得日がわかる昔の契約、家や駐車場賃貸不動産などの契約)
  • 関(関係。家族関係、地主との関係など)

自分で調べること

  •   現(現地確認。駐車スペースや家、隣地境界、交通量)
  •   環相(環境、相場。現地周りの市場環境や住宅や事業の需要や相場)
  •   税(税金。固定資産税のみこみなど、自分で調べられる税周りのこと)
  •   登建(登記、建築。法務局の登記記録(建築図面含む)の確認。市役所の建築指導課などにある建築計画概要書の確認。)
  •   公(公法上の規制。具体的には都市計画の今後の計画や、その他その地域特有の規制がないかを市役所の都市計画課等で確認。)
  •   提(提案内容の妥当性。また提案した会社があればその財務状況も。)

で、こんなイメージで無理やり語呂合わせっぽく覚えました。ChatGPTに作ってもらった「競う集計缶」「玄関掃除(税。かなり苦しい)闘犬皇帝」(笑)

文章の違和感に注意

説例を読む時間はそれぞれ15分しかないので ちょっと焦りは しますが やはり 問題文はできるだけ 丁寧に読もう と心がけました。というのも 過去問をやっていて分かったのですが、当然ながら問題文にヒントが隠されています。特にちょっと違和感のあるキーワードに注意です。例えば「 IT企業の役員をしている息子」であれば必ず高年収 なので 年収要件がある特例に引っかかってしまうケースが多いです。

最近の法改正は押さえる

過去問中心で勉強していいとは書きましたが 直近で施行されたの法改正についてはそれと別に知識だけ押さえておいたほうがいいと思います。
例えば私が受験した際には 手入れのされていない空き家についての空き家固定資産税の特典等の解除について 結構 細かく聞かれてしまいました。ちょうど前日にこの部分について「FPジャーナル(AFP/CFPに定期的に送付される)」でたまたまざっと見ていたので全く答えられないということはなかったのですが、もう少し内容をしっかり見ておけばよかったと反省しています。

Ankiソフトは軽く使う。印刷物にまとめる。復習は5周


さて英検から FP 3級からずっとお世話になっている 暗記アプリ「Anki」「AnkiWeb」ですが、今回も 活用しました。ただこの面接試験の問題は 前提条件をしっかり読み込まなくてはいけないのでパパッと 答えられるかどうか カード形式の問いにするのはちょっと面倒でした。結果的に 2周くらいやったんですが途中で紙の印刷物を読む形に移行しました。


というのも 試験会場では紙 あるいは本でしか勉強できない(スマホやPCは禁止)ため、先に移行しておいた方がいいと思ったからです。
やり方としては、まず過去問をやってそこに必要な論点をスマホのメモアプリで論点を一つずつ追記する形で書いていきました(ちょっとくらい間違いがあってもいいので音声認識テキスト変換でどんどん追記していきました)。以下のような感じ。自分の場合は40ページ強になりました。

それを何度も読み直し さらに 最終的には ワードにコピーして印刷して持ち歩きました。40ページくらいになりました。

印刷物は最後は キーワードを 黄色で蛍光ペンでマークをつけて このキーワードを見たら口で説明内容ができるように繰り返し復習しました。

こんな感じで、最終的には紙に印刷して持ち歩きました。

覚えるのと説明できるのは大違い

とにかく人に説明できるというのは覚えるより 1段先の理解が必要だというのを今回改めて思いました。少なくとも私はこの練習をしなかったらおそらく合格していなかったと思います。
相手がいてもいなくてもいいんですが とにかく口に出して説明することが非常に重要だと思います。

ということで真面目に勉強したのは4か月くらい。今記録を見たら120時間も勉強してました。(それにしてはできなかった。。)

本番の感触

本番の状況についても思い出す限り 書いていこうと思います。私はパート1が最初でした。 NISA は もろに出たので細かく説明でき、ここは 全く問題なかったと思います。
また論点についてもそれほど難しくなかったと思います。

問題はパート2。不動産で義理のお父さんの持つ空き家に対してどのように家を建てるかという問題。これは FP ジャーナルの最新号での相談内容と似ていて、管理が不十分な空き家の対応についても ここで コメントされていました。本当に行く前にしっかり読んでおけば良かったと思った案件でした。

面接官の方は正直 両方とも丁寧に面接をしていただき、いわゆる圧迫系の感じでは全くありませんでした。そういう意味ではラッキーだったと思います。結構ヒントを与えてくれた記憶があります。

面接試験の勉強はとても有益!

最後に。まあ大変な 試験ではあったのですが 私にとっては、今回の2次試験で学習した内容はとても有益なものだと思いました。というのも ペーパー テストでいろいろ知識は身につけましたが 実際のケースでどのように活用するか どのように アドバイスするか?それはなぜか?という全体像とストーリーを作る力をつけられたので。

さらに言うと私は中小企業診断士ですので 事業承継 が 大きな課題になってることは知っています。これについてある程度 詳しい知識を身につけることができたこともあり、とても自分にとって有益な試験であったと思います。

皆様の試験対策に少しでもお役に立てれば幸いです。

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